日曜日、晴天
毎週このマルキョシデパートの屋上では人気戦隊もののヒーローショーが行われている
「おとーさーん!粘着戦隊ガムテンジャーだって!ボク会いたいよー」
「うーん…買い物があるからなぁ…そうだ、お父さんが戻ってくるまで屋上で待ってるなら見てていいぞ」
「わかった!」
「よしよし、じゃあ行って来るからな」
このように、子供を置いて買い物に没頭するのはこの辺りでよく使われる手だ
近所の児童公園よりもこちらの方が子供が多いぐらいだ
ヒーローショーの時間がきた
目を輝かせる子供、毎週来ているせいか面倒臭そうな子供
さまざまな表情が小さなステージの前に並んでいる
内容はよくあるもの、解説のおねえさんが悪人役に捕まり、子供達が声を合わせてヒーローを呼ぶ
『たすけてー、ガムテンジャー!!』
「情熱粘着!ガムテレッド!!」
「ひやっと粘着!ガムテブルー!!」
「もっちり粘着!ガムテイエロゥ!!」
「ラブリー粘着!ガムテピンク!」
「純潔粘着!ガムテホワイト!」
「「「「「われら、粘着戦隊ガムテンジャー!!」」」」」
黒ずくめのザコ役たちを蹴散らし、解説のお姉さんを捕まえている悪人に必殺技の構えを取る
そのとき、ハプニングが起こった
必殺技に使うガムテープがピンクの仮面に引っ付き…仮面が取れた
「あ…」
空気が一瞬にして凍りつく
子供の一人がぽつりと
「ピンクじゃない…」
と呟いた
仮面を拾い上げた青年(?)は、子供達に向き合って話し始めた
「おまえらさぁ、ピンクじゃないとか何言ってんの?本物がこんなとこ来るはず無いって言うか
元の話じたい作り物ってわかってんだろ?驚いてんじゃないよ、最初からわかってることなんだろ?」
周りを照らす太陽など無いかのように気温が、体温が奪われていく
「もしかして本物だと思ってた?なら相当なアホだろ?ホントなら毎日ニュースに巨大怪獣とか取り上げられてるよ
お前ら程度の歳でもそのぐらいわかるだろ?仮に中の人が違うってこと言ってるなら俳優が来るとでも思っていたのか?
残念な事になぁ、あのヒーローもアクションやってるのは大抵別人、スタントマンなんだよ。たまに本当に入ってる奴いるけどな」
淡々と言う青年、視線は子供達に逃げる事を許していない
どのぐらい経ったのだろうか、レッド役が青年の方を叩き「その辺にしとこうよ」と言った
青年はもう言いたい事を言い尽くしていたらしく素直に従ったが、子供達は青ざめっぱなしだった
夕暮れ、父と子が手をつないで帰っている
「楽しかったか?」
「…うん…… うん、たのしかったよ!」
最初少しだけつまったが、すぐに笑顔で言い直した息子に父は満足し、それ以上のことを聞く事は無かった
クロトは部屋に帰るなりフォルテ星人の着ぐるみを着たまま寝転んだ
「疲れた…」
すでに中味を通帳などに入れて空っぽの給料袋をゴミ箱にほうり捨てる
クロトは今日の失敗で酷く怒られたりはしなかったが、ほとぼりが冷めるまで自粛してくれと言われてしまった
「……寝よう」
誰に聞かれるでもなく呟き、頭の被り物をはずしてから眠りについた