「おはよー……あれ?」
町のはずれのほうにある看板の出ていない店
店の主である男の置き手紙をみて残された子供は呟いた
「……ってことは俺とアイツで店番かよ…やだなぁ」
店主のいない店に残されたのはこのコモモと、ヒッキーという男性だけだ
もっとも、その呼ばれ方はあくまで通称、2人とも名前は殆どの人に知られていない
コモモはまずいつものように朝食の準備を整え、ヒッキーを起こしにいく
普段、彼を起こすのは店主の仕事だ
ヒッキーより6つ年下のコモモには危険な仕事だ
彼の部屋の前で、覚悟を決めたコモモは部屋に乗り込んでいった
「起きろモリス!!朝食だぞ!」
質素なベッドの中で、何かが動き、起き上がる
それはヒッキーではなく、彼がしつけを任されていた女の奴隷だった
裸で、青ざめている
「タスケテ…モウワガママイイマセン…タスケテ…」
ふらふらとコモモに近づき懇願する彼女を見て、コモモは頭を抱えた
「モリス…お前コレで何回目だ?」
ベッドからもう一人起き上がり、不機嫌そうに答えた
「さぁ…?……っていうより何でコモモがくるの…?」
「ビグレートさんは別の奴隷を買い取り先につれてってるよ。何日かかかるって」
彼は納得した様子でコモモに扉を閉めるようにいった
コモモだってヒッキーの裸を見たいなんて思っていない
震える奴隷を宿舎に連れて行く、引っ掻かれたり殴られた痕が生々しい
「ゴメンナサイ…ゴメンナサイ…」
「まだここで気づけた分良かったよ。売られた先では処分されるかもしれなかったんだからな」
宿舎のなかで売り手がついていないのはこの奴隷だけだ
他の奴隷は大抵宿舎に留まらずすぐに買い手の元へ連れて行かれる
「怪我が治ったら、すぐビグレートさんが買い手を見つけてくれるよ。きっとお前に合う人だ」
ぐずる奴隷をなだめながら、彼女のベッドに寝かしつける
「あとでおまえの分のメシも持ってきてやるからゆっくり休め。早く怪我が治るといいな」
一度だけ首を縦に振ると、まるでコモモに怯えるかのように薄い毛布に潜り込んだ
コモモは、彼女の内股に血がこびりついていたのを見逃していなかった
コレで何度目だろう?と、記憶をたどろうともせず呟く
とめてくれる人がいなければ、モリスはどこまでも残虐な事を繰り返す
「昔は、あんなんじゃなかったのにな」
そういってコモモは宿舎のドアに鍵を掛け、居間に引き返していった
居間では、すでに身支度を整えたモリスが朝食を食べ終わっていた
彼はコモモを見つけると「掃除たのむ」とだけいって店先に出て行った
コモモはそれを見送りもせず自分の分を流し込んだ
朝、あれをみたら食欲も失せる
コモモもモリスも、もとは虐待されていた子供だった
モリスの場合は自分よりも弱いものへの暴力の連鎖を行うようになった
コモモはモリスの行動を見ると、自分を苛めていた連中の事を思い出して気分が重くなる
「あっ、やべっ アイツのメシもってくの忘れるとこだった」
少し冷めたシチューを器によそい、鍵をもってまた宿舎へと向かう
「……あ…」
ベッドの中にいたはずの奴隷は、だらりと体を半分放り出していた
唇の端からは血が垂れ、口を開かせると柔らかい肉の一部がのどの奥に詰まっていた
「……バカだなぁ、おれの料理旨いんだぜ?それに生きてりゃもう少しマシな時期もあっただろうにさ」
持っていたシチューに目を落として、コモモはポツリと呟いた
「あーあ、無駄になっちまった」
オワリ